沙和は、頭をハンマーで殴られたようなショックを受けた。だって、有紀は、仕事が生きがいで、結婚とか恋愛とかまでは考えう余裕なんてないはず。ずっとそう信じて疑わなかったからだ。
「うちら、来年30じゃん。親もうるさいしさー。でも、職場じゃ出会いもないしね。恋活アプリのOmiaiとかは使ったことあったけど。結婚相談所は初めてなんだよね。とりあえず、友達が登録してる“ゼクシィ縁結び”ってところでやってみようかなぁって」
苦笑いしながら、有紀はスマホを取り出し、ゼクシィ縁結びの会員専用サイトを見せてくれた。すでに、メッセージのやりとりを進めている相手が何人かいるらしい。
「そうだね。結婚とか、そろそろちゃんと考えないとだよねー。あー、私も何か出会いないかなぁ」
そう適当に返事をして、沙和は慌てて笑顔を作った。その笑顔が引きつっているのが自分でも分かる。
支店を出て、駅に向かう途中、沙和はスマホを取り出し、LINEを打っていた。
宛先は、俊太――。
「元気だよ。またご飯でも行こうよ♪」