日本人女性の社会進出が当たり前になった現代において、結婚後も変わりなく働き、出産・子育てを頑張る女性も当たり前になりつつあります。
しかし社会を見渡してみると、育休制度は名ばかりで実際には休めない企業や、社員の間で制度の重要性が理解されていないケースもあります。
また産む側も、働く時間帯の子育てを誰にお願いするか、産むタイミングをどうするか、出産・子育てが可能な職場環境をいかに手に入れるかなど、周囲も含めて安心して出産・子育てするための根回し・戦略が欠かせません。
企業も子育てしたい女性も、どちらも納得のいく働き方を選択するにはどうすればよいか。そこで今回は、仕事と子育ての両立に悩む30代女性の視点から考えてみましょう。
今の職場に満足している正社員の場合
育休制度の利用実績を確認しよう
妊娠は「授かり物」とも「計画的」とも言われますが、いずれにしろ、妊娠したら今後のキャリアをどうするか考えなければいけません。
もし今の職場に満足しているなら、過去に育休制度を利用した女性がいたか、人事部や総務部へ確認してみましょう。もし先輩が育休制度を活用して産休・育休明けも復帰していれば、自身のロールモデルになります。
ただし同じ企業内でも部署によっては育休がとりづらい業種もあるかもしれないので、上司とも相談し、仕事復帰が可能か確認しておくと安心です。
保育園に入れるか問題
都市部で大きな問題となっている待機児童。共働きの夫婦が子どもを預けたくても保育園に空きがなく、泣く泣く母親が会社を辞めざるを得なかった……といったケースを耳にされた方もいるでしょう。
会社側が育休制度を歓迎してくれていても、子どもを預けることができなければ仕事ができません。そこでいかに保育園を確保するかが重要ですが、入園させるには「夫婦どちらもフルタイム勤務」の家庭が有利です。
第三者から見ても、明らかに子どもの面倒を見る時間がない家庭から入園が優遇されるという理由です。その点、正社員はフルタイム勤務が基本ですから入園条件としても妥当です。
ただし自宅の周囲に親戚の住まいがあり、預けることが可能の場合は入園の可能性が低くなることもあります。一方で、兄弟同時に申し込む場合や単身赴任の世帯は入園の確率が高くなるなど、細かな状況で入園の可能性も異なります。
入園条件の詳細は地方自治体に問い合わせて、ご自身の家庭の場合を確認してみましょう。
入園できなくても救済措置はある
「子どもは入園できそうにないし、親にも預けられないから退職するしかない」と諦めているなら、ちょっと待って。
2017年10月1日から改正される育児・介護休業法によって、入園できない場合は育児休暇を最長2歳まで引き延ばせるようになります。
とはいえ、出産・子育てで仕事の最前線から長期的に離れることに不安を感じるかもしれません。どのような形で子育てをしていくのが望ましいか、家族とよく話し合うことが大切です。
今の職場に満足している時短勤務者の場合
育休制度を利用できる?
契約社員や、派遣社員、パート、アルバイトといった有期契約労働者は、正社員より「好きな時に始めることができ、いつでも辞めることができる」自由度の高さが特徴です。
ひょっとして、育児休暇制度は正社員だけが利用できると思っていませんか?実は有期契約労働者でも、無期契約でなければ利用できると法律で定められています。
ただしこの制度を活用するためには
- 同じ雇用主に1年以上雇用されていること
- 育休明けも雇用されることが見込まれている
ことが条件です。
ここでカギとなるのが「育休明けも雇用してもらえるか」です。仮に有期契約労働者が育児休暇を利用した場合、雇用主は労働者の休暇中に新しい人材を雇いますが、そのためには求人広告を出したり、新しい人材を教育したりと時間とコストがかかります。
限られた期間を埋めるだけのために、時間とコストをかけて新しい人材を雇うことが雇用主側のメリットとなりうるか。もしくは労働者に一時的とはいえ休暇を与え、復帰してもらうほどに重要な人材なのか……その判断は雇用主に委ねられるのが実情です。
やっぱりキャリアと出産・育児の両立はムリ?
両立できる可能性はあります。というのも、雇用主が妊娠・出産を理由に解雇することは法律で禁止されているので、一方的な理由で辞めさせられることはありません。
もし継続した雇用の見込みがなくても、労働基準法により産休(産前産後休暇)を取ることが可能です。
産休は、出産予定日の6週間前と、産後の翌日以降の8週間、計14週間が休業期間にあたります。この間は法的に休むことができ、その後職場に復帰できます。
14週間ということは3ヶ月と2週間。産休明けのタイミングだと、数時間おきに赤ちゃんにミルクが必要になるうえ、産後は体力が落ちているため、出産前と同じような働き方は厳しいと感じるかもしれません。
ただし1回あたり30分の育児時間を1日に2回まで請求できる「育児時間」や、休日労働・時間外労働などを制限できる制度など、産後の女性を支える国の制度を利用することはできます。
一方、自身が働けない時間は周囲や上層部が協力して対応していかなければなりません。産休を取る場合、会社や同僚が子育てにどれだけ理解を示してくれるかも、チェックしておきましょう。
保育園の入園はフルタイム勤務に軍配
待機児童が問題となる中、入園の最低条件は先述の通り、夫婦それぞれがフルタイム勤務であること。
有期契約労働者の中でも、アルバイトやパートタイムは労働時間が短いと判断される可能性があるため、フルタイム勤務者よりもプライオリティは低くなります。
詳しくは地方自治体に相談してみましょう。
転職したい場合
育児休暇の取得実績をチェック
今いる企業で育児休暇の取得実績がない場合、転職する道も考えましょう。できれば妊娠してからではなく、夫婦の間で子どもを作ると決めているなら、早めに転職することをおすすめします。
制度はあっても取得したことがないということは、前例がなかったか、企業の都合など何らかの理由で利用されていなかった可能性があります。特に中小企業は予算も時間も余裕がないケースが多いため、制度はあっても実質的に利用されていない場合が考えられます。
「前例がないなら作ればいい」と考える方もいるかもしれません。しかし前例がないということは、妊娠に対する周囲の接し方や、産休・育休の理解度が少ないか、ほぼ無いに等しい可能性があります。
それは現場だけではなく上層部や総務、人事も同様で、育休を取得する労働者にどのような対応をするべきかを、企業として学び、体制を整える必要があります。
ロールモデルのいない企業よりも、既に育休取得の実績があり、周囲の理解も得られている職場環境で働くほうが、自身も安心して仕事が続けられます。
雇用形態をどうするか
時短勤務(有期契約労働者)の場合、企業側の理解や保育園の入園条件など、思わぬところで苦労することがあります。できれば正社員で働ける企業を探しましょう。
転職エージェントを味方につけよう
転職活動をする際は、転職エージェントを味方につけて希望の仕事を獲得しましょう。
転職エージェントとは、専任のスタッフが求人を紹介してくれるほか、転職相談や面接のセッティング、報酬の交渉など転職時の煩雑な作業を全てお任せできる企業を指します。
これから産休・育休の取得を予定している旨をエージェントに伝え、どのような待遇で働きたいかを一緒に考えてもらうと、転職活動をスムーズに進めることができます。例えばフリマアプリで有名な「メルカリ」は、産休・育休支援が充実していたり、女性の活躍が目立つ企業だと化粧品ブランド「資生堂」と言われています。通常の転職サイトでは載っていない非公開求人も、大手転職サイト「リクルートエージェント」ならあります。
産休・育休は子育てする夫婦に等しく与えられる権利です。子育てしやすい環境で安心して仕事が続けられるよう、夫婦で話し合ったり、企業の協力も得たりしながら頑張りましょう。
まとめ
- 産休・育休の取得実績がある企業で働こう
- 保育園の確保、周囲の協力も合わせて考えること
- 産休は時短労働者でも取得できる
- 転職には転職エージェントを利用するのがおすすめ